親父の一番長い日
いつも拝見している惑さんの「わくわく日記」に、娘さんのとてもおめでたい記事がアップされていた(こちら)。お祝いコメントを書き始めてみたものの、「それならばいっそ」と私自身の思い出話で記事を一つかかせていただこうと思う。
娘の恋人が結婚の承諾を得にやってくる! これをドラマでなくて何と言おう。この記事のタイトルにした「親父の一番長い日」はさだまさしの代表曲の一つだけれど、この中で親父さんは「分かった、娘はくれてやる」と言った後で、ただし、おまえを殴らせろ。とも言う。惑さんはこんなドラマチックな対応ではなかったとおしゃっているが、日常の出来事はどれも当人にとっては大切なドラマであると思う。
しかし、我が家の場合、ドラマとは程遠かった。その日、一番張り切っていたのは母だった。朝からせっせと煮しめを作り、カツオのたたきを盛り付けていた。「あのぅ、手伝おうか・・?」とうろうろする私に、いつも通り「あなたがいると却って邪魔!」と言い捨て、忙しく立ち働いていた。
一方父はといえば、なんとか「花嫁の父」の心境になろうとはしていたみたいだった。威厳を保った顔をしたほうがいいのか、いや、厳しい父親を演じたほうがいいのか。もしかしたら、迷っていたのかもしれない。でも、家ではともかく外面のいい父が、初対面の男性に愛想悪く出来るわけもなかった。彼が訪れて迎え入れた父は、満面の笑顔だった。
笑顔の父。笑顔の母。笑顔の彼。照れくさくて笑う私。4人ともにこにこしていて、それでいて業界の違う父と彼とは話題の接点がほとんどなかった。場を埋めるために両親は彼に料理とお酒を勧めてばかりだった。
が、彼はお酒に弱いのである。あるいは緊張していたからかもしれない。あっという間に真っ赤になったかと思うと、まぶたが下がり始めた。慌てた母が横になるように勧め、固辞する彼との間でしばらくは応酬が続いたが結局は休む羽目になり、少しして目が覚めた彼は恐縮しながらコーヒーとデザートに手を付けると、もう帰る時間だった。玄関に出てきた父は「というわけで、よろしく」と声をかけ、彼は「あ、はい」と答えた。それがその日の出来事だった。
母は後で「で、**さんは、何しに来たんだろうねえ」と笑いをかみ締めながら言っていた。私まで恐縮して「ごめん」と言うと、「いいの、いいの。だってこうして会いに来る時点で結婚ってことだし、ああやって一緒に楽しく食事をしたことでもう決まり、なんだから」と笑った。そして、「言葉なんて本当はたいして意味がないからねえ」とも言った。これには本当は深い訳があるのだが、この話はまた別の機会に。
考えてみればこの後結婚した主人からは実はプロポーズも受けていない。「なんとなく」そういうことになり、どちらの親も「そういうことになるだろう」と薄々気付いていて、とんとんとんとこういうことになっていた。妹からは「なんだかうまく行き過ぎてつまんないねー」と当時言われたが、「それの何が悪い!」と憤慨していた。
などとつらつら書いてきて、自分が惑さんと同じ親の立場ではなく、お嬢さんの立場で受け止めていたことに気付いて苦笑してしまった。あの日から今日までよりも、この先娘が彼を連れてくることの方が短いかもしれないのに。その日、主人はどうするんだろう。泣きそうにも思うけれど、やっぱり「いやいや、皆まで言わないで下さい。分かってますから」という態度をとるのかもしれない。まあ、形なんてどうだっていいのだ。幸せなら。
最後になりますが、改めて、惑さん、お嬢さんのこと、本当におめでとうございます。お嬢さんの幸せなお話に、私まで幸せな気分にさせていただきました。どうぞ末永くお幸せに。。
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コメント
kakoさん、「おまえを殴らせろ」はさだまさしの「おやじの一番長い日」だったんですね。「なんだか凄くいい父親みたいだよねぇ」と姉妹はあの記事を読んで苦笑していたようです。普段見ている姿とはちがっていたかも知れません。
>形なんてどうだっていいのだ。幸せなら。
そうなんですよね。幸せになってくれるなら。kakoさんのお父さんもそうだったのだと思いますよ。お祝いのトラックバック記事ありがとうございました。
投稿: 惑 | 2008/05/11 22:09
惑さん、すみません、こちらに呼び出したみたいになってしまって。
久しぶりにこのときのことを思い出し、昼食の話題に上りました。娘の笑うこと、笑うこと。そして「あなたの時にはどうなるのかねえ」と言い合いました。にきびだらけの顔からはちょっと想像つきませんが、もしかするとあっという間のことなのかもしれません。
惑さん、いいお父さんでしょう。世の中の、娘の幸せを願う男性は、皆いいお父さんです!
投稿: Kako | 2008/05/11 22:30