崩壊の足音?
私がオランダで生活していた頃、在蘭歴の長い女性が言った。「子育てを考えると、日本に帰りたくないなあ」と。彼女は二人の娘をオランダで出産し、育てていた。子供たちの学齢期はともかく、それまではオランダで子育てしたいと言うのだ。
オランダに住んでいても日本のニュースを知ることは難しくなかった。「お産の出来る産婦人科が減っている」「夜間診療をしてくれる小児科が不足し、たらい回しにされる」等々、聞こえてくるのは不安になるようなことばかりだ。オランダの医療体制が完璧であったとは言いがたいが(日本とは医療の考え方が違うのでその点での不安は大きい)、ホームドクター制が機能していたおかげで夜間、休日に途方にくれるという心配はなかった。少なくとも、たらい回しには遭わない。
たらい回しといえば、先日の奈良県の妊婦のことを思い浮かべる人が多いと思う。「重病の患者を断るなんて!」という報道もあるようだけれど、救急の医療体制についてはもっともっと議論されるべきだろう。最近になってようやく産科医不足がクローズアップされるようになったが、実際には救急医療全般、かなり深刻な事態になっているらしい。子供のいない人にとっても他人事ではないのだ。
私の住んでいる地域には救急指定になっているとても大きな病院がA,B二つある。でも、実際に救急車で運ばれたという話はほとんどA病院ばかりだ。どうも、救急隊員が受け入れ確認の連絡をした際、B病院はほとんどの急患を受け入れ拒否しているらしい。表向きは満床が理由なのだろうが、救急に対応できる人材が大きく不足しているようだ。しかし、一方のA病院にも限界はある。さらにA病院の職員数も減ってきている。勤務条件のひどさに退職し、その補充が間に合わないのである。
こうなった一番の原因は、厚労省の「医療費抑制政策」であると現場では言われているらしい。厚労省はモデルケースとしてイギリスの医療改革方法を選んだのだが、そのイギリスでその後どういう事態が起きたか。待遇が悪くなることで深刻な医師不足が生じたのだった。公的な医療機関ではひどい待ち時間が当たり前となり、富裕層は高額な支払いを必要とする私立の医療機関に駆け込むことになった。新たに医師になろうとする者が減り、移民など語学力に問題があるといった今までとは違ったタイプの医師の割合がじわじわと増えていった。慌てた英政府が対策を講じたが、立て直せたとは言いがたい。日本は、そのやり方を真似ようとしているのである。同じ事態が起きることは容易に想像できる。
他にも原因はある。医師の意識の変化だ。最近の若い医師は、緊急性のある病気を扱う科(要するに「大変な科」)を避ける傾向にあるという。産科ばかりではないのだ。これを「けしからん」というのは簡単だが、大手病院を支える勤務医にだって言い分はあるだろう。昼夜関係なく働かされ、最近では患者からも「適当なことやってるんじゃないか」と疑われ、尊敬もされない。それでいて収入は金融関係の会社員よりずっと少ないし、開業医とでは比べようもない。「やってらんねえ」と言いたくもなるだろう。もともと当直明けの通常勤務などという世間の「非常識」は、勤務医の間では「常識」だったのだ。今までが、政府も、患者も、医師のボランティア精神に頼り過ぎていたのだと思う。このままでは、早晩、本当に必要とされる医師は大都市かどうかに関わらず絶対的に不足する。
今、日本の医療は曲がり角に来ている。その行き先をどちらの方向に向けさせるのか。私たちにもまたその責任はある。
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コメント
Kakoさん お久しぶりです、Cyberです。
これまた重たいテーマですな、、仰る事ごもっともです。
もう10年以上前になりますが、日本に米国HMOが攻め込もうとした時が有りました。
医療費予算縮小と騒がれ始めた頃でしょうか。
皆民保険制度がどうたらこうたら、やがて破綻する、ついてはHMOを導入せよという一方的な演説に5万円も払って講演を聴きに行ったものでした(あぁ5万円・・涙)
ところがどっこい、その数年後に知り合ったボストンに住むアメリカ人と親しくなり、思い切ってプライベートに踏込んで聞いてみたらば、ホンダシビック(190cmの大男なのに 笑)で事故を起し奥さんと一緒に入院したのだけどHMOから支払われた医療費は150万しかなかったとの事。
日本では考えられない金額だと言うと、ドラえもんのジャイアンがビックリした時ように、目をパチクリパチクリしてました。
マイケル・ムーアが描いてる状況は昔からの事だったのですな。
ホームドクター制を導入せよという動きは前々から有りましたが、都市部ほど鈍いようですね。
地方都市に住む私の親父は、かかりつけ医のお陰で3度ほど命を救われてますが(その度てんやわんやでしたが)、ホント有り難いですよ。
お陰でまだ生きてますが(笑)
我々が出来る事といったら、やはり無駄な医療費を使わない事、後にそれが医療制度改革の地盤にもなるように思うのです。
医療保険があるから安い、タダとかいう感覚はそろそろ捨てるべき時期かと思うのです。
昭和の時代ではないのですからね。
投稿 Cyber | 2007/09/03 22:37
Cyberさん、お返事が遅くなり申し訳ありませんでした。
結局、「医療の理想とは何か?」という問題にぶち当たるのだと思うのです。誰もが安全に安価に高度な医療をというのは無理なんですよね。どこかがそれを負担しなければいけないのですから。
それに、人間は何とか自分が得しようとしてしまう。だから、タダならと救急車をばんばん呼んでしまったする・・・。
医療制度改革にしても、医療業界が一枚岩ではないですからねえ。勤務医と開業医じゃ全然立場が違いますから、当然目指す方向も違ってしまいますし。発言力のある医師会って、開業医の団体ですから。
私たちが出来ることなんてたかがしれますけど、やっぱり、知識を持つことは大事ですよね。
投稿 Kako | 2007/09/08 21:13
12誘導心電図をDICOMに変換するソフトウエア
■医療画像製品
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複数の≪DICOM≫データをサーバに同時送信
レポートなどのPDF ファイルを≪DICOM≫化し、サーバに
送信が可能モダリティの種類や環境に応じたきめ細かい
カスタマイズ対応
投稿 パソコン心電計 | 2007/11/05 04:42