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クルとチル

人には犬派と猫派が居るという。でも、私には選べない。とにかく、どちらも捨てがたいほど好きなのだ。でも、娘から「犬が飼いたい!」と請われての答えは「NO!」だ。ペットはとても可愛いけれど、命が重い。自分よりも先に死んでいってしまうことを思うと、簡単には「うん」と言えないのだ。だから、近所の商店街の夜店で金魚すくいをねだられたときは随分抵抗した。でも、まあ、金魚ぐらいなら、死んでもつらくないかも・・と渋々うなずき、そうして二匹の金魚が我が家にやってきたのだった。一年半前のことだ。

夜店の金魚といえば、あっという間に死んでしまうのが常だと思っていた。が、娘が「クル」「チル」と名づけた二匹は違った。一週間経っても、二週間経っても元気だった。

大きい身体の「クル」はとにかくよく食べた。えさをやると、すごい勢いで飛びつき、ぱくぱくと吸い込んだ。間を置かずにえさをやってもどんどん食べてしまう。水槽にそばに寄るだけでえさを欲しそうに私たちを見る。底なしの食欲だ。だからなのか、あっという間にどんどん大きくなっていった。

一方の「チル」。こちらはちっとも食べない。「クル」の食べる姿を見て、ようやくえさがあることに気づいたりする。そのときになって食いつこうとするのだが、粒状のえさをすぐに吐き出してしまう。どうも「チル」には大きすぎるらしい。で、仕方なく粒を二つに割って水槽に落としてやる。が、ぼやぼやしているうちに、飢えた「クル」にとられてしまう。で、「クル」の気を別なことでそらしておいて、その間に急いで「チル」に食べさせる。少しずつ身体は大きくなるのだが、相変わらず大き目の粒を吸い込むのは難しい様子だから、これはもう性質なのかもしれない。

リビングの片隅の水槽は、我が家の背景の一つだった。娘はせっせと毎朝えさをやるのをかかさなかったし、水槽のそばで夫が仕事をしていると、「クル」がもの欲しげにじっと夫を見るのも常だった。いつまでもいつまでもそれが続くような気がしていた。が、先週の土曜日の夜、娘が寝た後に水槽を覗いた夫が異変に気付いた。

「クル」の様子がおかしい。身体をきちんと保てないらしい。口を上に向け、たてになっている。身体の色も薄い。じっとみると、尾びれの端がうっすらと白くなっていた。私は魚のことには詳しくないけれど、直感した。「クル」は病気だ。慌ててネットで調べる。やはり、白点病のようだ。「えらにも白い分泌物が出てくると、呼吸困難で死ぬ」とある。おそるおそる「クル」のえらを観察した。すると、そこにはうっすらと白いものがあった。

一夜明け、急いで「クル」をみると、えらの部分はさらに白くなっていた。後から起きてきた娘に事実を告げると、じっと考え込むむようにした後、顔をくしゃくしゃにして泣き出した。「ダメなの? もう死んじゃうの?」そう言って私に抱きついてきた。

私たちは、とにかく出来るだけのことをしてあげようと話し合った。店が開く時間を待ってペットショップに急ぎ、薬を買ってきた。水槽に投入する。水が青く染まったが、「クル」の様子はどんどん悪くなっていった。一時間・・二時間・・せわしなく動いていたえらが、だんだんと間隔があいていく。身体を保てず、横になってしまう。そして・・・。

えらは全く動かなくなった。ずっと長いこと水槽の前で見守っていた私たちも、もうあきらめなければならないことを悟った。ぴくりとも動かない「クル」を、私たちはすくいあげて庭の片隅に埋め、花を添えた。

残った「チル」。「クル」がもうほとんど動かなくなった頃、「チル」は、もうずっと「クル」のそばを離れなかった。時折、鼻の先でつつくようなそぶりをすることもあった。そして、「クル」が居なくなった瞬間、「チル」は慌てたように水槽の中を泳ぎ回った。必死で。多分、「クル」の姿を探していたのだと思う。

それから数分後、「チル」は気付いたようだった。もう、「クル」は二度と戻ってこないのだということを。「チル」はじっと耐えていた。一箇所で動かぬまま、泳ぎもせず、ただただ、悲しみにくれている。「魚にも心があるんだ・・」「チル」のその姿を見ていたら、「クル」を失った悲しみが、またじわじわと私たちの胸に満ちてくるのを感じた。

あれから二日。少し元気を取り戻した「チル」が、また元気なくなっている。恐れていた通り、「チル」の尾びれに白いものが出てきたのだ。再び水槽に薬剤を入れる。どうにか持ちこたえて欲しい。私たちは祈るような気持ちでいる。そして、「もしも直ったら・・」ま仲間を増やしてあげようと話し合っているのだった。

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受信: 2007/03/06 21:26

コメント

Kakoさま こんばんは
Cyberです
涙、出ちゃいましたよ。
ここまで愛されたクルちゃんのLifeは充実していた事でしょう。
ん~、ウチにはエル子が居ますけど、、、覚悟して引き取ったのですが、、、こんな話を聞くと辛いです。
それでも命の尊さを、身をもって教えてくれたのかも。
お嬢さんを元気付けてあげて下さいね。

投稿 Cyber | 2007/03/06 19:16

こんばんは

小さな命に、ここまで心を込められるのは素晴らしいことですね。私も泣いちゃいました。

「チル」ちゃん、持ち堪えてくれるといいですね。元々が生命力の強かったのですから、何とか元気を取り戻してくれる、そう信じたいです。

私が以前飼っていたシーズー犬に子供が3匹生まれて、そのうち唯一のオスが、母犬のミルクを吸う力が弱く、私たちが母犬から乳を採って、付きっ切りでスポイトで飲ませようとしましたが飲んでくれず、生まれて間もなく死んでしまいました。母犬がその子をいつまでも探していたのを思い出しました。しばらくは飼い主を信じてくれなかったのが何より辛かったです。

すみません、私ごとでした。

投稿 poohpapa | 2007/03/06 21:52

Cyberさん、こんにちは。
愛していた・・というよりは、本当に身近な存在になっていたのだと思います。
正直、金魚で凹むとは思いませんでした・・。
でも、考えてみれば、最期をきちんと看取ることができたので良かったのかなあと思います。娘にとってもよい経験になったようです。

投稿 Kako | 2007/03/08 20:12

poohpapaさん、こんばんは。
薬浴が良かったのか、チルの病状は進んではいないようです。このまま良くなってくれるといいのですが・・。

もともとクルの後をついて回っている感じで、生命力が強い方ではないのです。最初にクルの方が病気になったのが不思議だったくらいです。

今もチル、闘っています・・。

投稿 Kako | 2007/03/08 20:17

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