私は犬も猫も大好きだ。娘も犬が大好きで、しばらくは「飼いたい!」と随分せがまれたけど、「うちでは飼いません!」といい続けたせいで最近ではあきらめたらしい。私がダメと言ったのは、ペットが居ては好きな旅行に手軽に出かけることができないのもあるが、人間よりも寿命の短い彼らを、いつか見送らざるを得ないのが怖いからだった。私は臆病者なんである。
で、代わりと言ってはなんだけれど、我が家ではよく犬とのふれあい広場のようなところへ出かけている。都内にはこういう施設がいくつもあるが、場所によって本当に雰囲気が違う。私たちがいつも出向くのは、とても人懐こいわんちゃんばかりがいる所だ。
こういうのは、普段そのわんちゃん達がどういう風に扱われているかが出るのだと思う。そこはいつも清潔に保たれているし、わんちゃん達の目におびえがない。人間に全幅の信頼を寄せているのがよくわかる。こちらが座り込むと甘えるようにひざに乗り、まあるくなって頭を私たちの腕にのせる。目を細めて心底リラックスしているわんちゃんの頭をなで、そのことで私たちが癒されていく。その感覚を楽しみに、私たちはいつもでかけるのだった。
今日も例によってそこに出向いたのだが、入ってすぐのところに一匹だけ離されている犬がいた。その犬は私たちの姿を見つけると大喜びで、身を乗り出すようにして囲いに足をかけていた。その姿があまりにかわいかったので私はしばらくその犬をかまってやった。が、ほどなくして、その犬がどうして皆から離されてそこにいるのか分かった。
そのトイプードル、まるでぬいぐるみのように愛くるしいのだが、大きな欠点があった。口のそばにくるもの、全部かんでしまうのである。私が手を寄せると当然のように甘がみしてくるし、気付けば傍らに置かれたぬいぐるみのおもちゃは、噛んだ後だらけでぼろぼろだった。そこは小さい子供も犬と触れ合える施設だ。すぐに噛んでしまう犬を、その集団の中には置いておけなかったのだろう。
時間が経つにつれ、そこは子供連れで大賑わいになっていった。広場のほうでは沢山のわんちゃんと、そのわんちゃんたちをなでたり抱っこしたりする子供たちがうれしそうにはしゃいでいた。でも、隔離された「問題犬」はただ一匹、もくもくとぬいぐるみにかみついていた。
人間と楽しく遊ぶことが使命のこの場所で、あのわんちゃんはこれからどうなっていくんだろう。ちゃんと噛むことをやめ、うまくやっていくことが出来るんだろうか。
どうしてなのかよく分からない。でも私は、今日私のひざの上で上手に甘えていたわんちゃんよりも、あの犬のことがいつまでも気にかかっているのだった。
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