プレゼント
週末、娘はせっせとクリスマスプレゼントを作っていた。今週クラスのクリスマス会があって、それぞれ手作りのプレゼントを用意しなければならなかったのだ。娘は手先が器用だし、こういうことが大好きなので、苦労するというよりは楽しんでいたと言ったほうがいい。出来上がったマスコットは初めてのお裁縫にしては上出来で、本人も大満足の様子だった。その姿を眺めながら、私も同じように手作りプレゼントを作ったことを思い出した。
小学5年生のクリスマス会。悩みに悩んだ私は翌年のカレンダーを作ることにした。12か月分日付を書き入れ、雑誌や広告から切り抜いた写真を貼り、自分で絵を書き加えた。凝ったせいで、仕上がったのはかなり遅い時間。母には、「そこまでしなくても」とあきれられたが、本人としては大傑作のつもりだった。
翌日、プレゼント交換は大きな輪になって回した。クリスマスソングに合わせてプレゼントを次々手渡しながら、皆、誰のどんなプレゼントがあたるだろうとどきどきしていたに違いなかった。そうして先生がカセットテープの音を止めたとき、私の手の上には新聞紙のかたまりがあった。
がさごそと皆がプレゼントを開ける。私もそっと新聞紙を広げる。でも、なかなか中身にたどり着かない。何重にもなっているのだ。根気よく一枚一枚開けていく。その分だけ期待と失望が強くなっていく。そして、最後にようやく現れたのは、プラスチック製の小さな竹とんぼだった。
先生は確かに「手作りのものを用意しましょう」と言っていた。周りを見回しても、どれもが一生懸命作られたものだった。でも、手元にある竹とんぼは、何かのおまけのようにしか見えなかった。私は、昨夜自分が頑張っていたことを思い出すとなんだか物悲しくて、竹とんぼをすぐに新聞紙に包みなおして顔をあげた。
こういうプレゼント交換は、人数をたどれば一体誰が用意したものなのかが分かる。私はつい目で数を追った。と、その先に、おずおずと私を見つめる視線があった。いつも大人しく、声すら聞いたことのない男の子が、私と目が合うなり慌てて目をふせた。
今なら分かる。きっと彼は何を作ったらいいのか全然分からなかったのだ。だから、自分がもともと持っていた竹とんぼを、それでも手作りに見えるように、ナイフであちこち傷をつけたのだ。でも、心配で心配で、プレゼントを回しながらも、どこへそれがたどり着くのかずっと見守っていたのだろう。
でも、あの時、私は、皆が互いにプレゼントを見せ合う中で、じっと新聞紙の塊を見つめているだけだった。その姿をあの男の子はどういう気持ちで見ていたんだろう。その日から私は、一度も彼と口をきく機会はなかった。その後すぐに始まった冬休み中に、私は遠くの町に転校したのだった。
クリスマス会当日、娘はプレゼント交換でかわいらしいオーナメントをもらってきた。気に入ったらしく、早速自分のクリスマスツリーに飾っていた。赤い靴下の飾りが、他のオーナメントと一緒にゆれている。
それを見ながら思う。私も、あの時あの竹とんぼを、あれこれ考えずに飛ばしてみればよかったのに、と。
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コメント
こんばんは。
そのKakoさんの想いがきっと素晴らしいプレゼントになったのでしょうね。
以前に書いた記事で恐縮ですが、拙文「ものよりおもいで」をトラックバックさせていただきます。まさにこのお話は「ものよりおもいで」のプレゼントだと思ったものですから・・・
投稿: ぞふぃ | 2005/12/22 18:39
ぞふぃさん、こんばんは。
私の想いがプレゼントになったのならよいのですが、実際は未熟な子供でしかなかったのではないかと思っています。今なら色々思い至ることができるだけに、切ない気がします。
投稿: Kako | 2005/12/26 22:46
Kakoさん、コメントへの返信ありがとうございます。
私の言葉が足りなくてすみません。
私が言いたかったのは、
「Kakoさんの切ない思い出が今も大人になったKakoさん自身へのプレゼントになっている」ということです。その少年へのものではなくて・・・
いろいろな思い出は例えそれが切ないものでもそれだけ人を深くしてくれると思うのです。いい思い出をお持ちで羨ましいです。
投稿: ぞふぃ | 2005/12/28 14:28
ぞふぃさん、再度ありがとうございます。
こちらこそ、早とちりしてしまってすみませんでした。
これは私の勝手な想像なのですが・・
多分、こういう経験は誰にもあるのではないかと思います。それがいつまでも心に残っているか、あるいは何かのきっかけで思い出すことができるか、といった違いのような気がします。私は細かなことを覚えていることが多くて・・。
先日、夫から「古いことを覚えているということは、新しい記憶が入っていないってことじゃない?」と言われました(怒)
投稿: Kako | 2005/12/29 22:47