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贅沢

高校生の頃、とある地方都市のニュータウンに住んでいた。山肌に沿うように家が立ち並び、山全体が住宅街になっているのだった。私が住んだ家は坂を登った一番奥の突き当たりだったから、家の前の道路はそのまま本物の山にさえぎられていた。夜になると道路を狸が横切ったし、下手すると朝もやの中カッコウの鳴き声が響いてくるのだ。

学校の帰り道、バス停から家まではあはあ息を弾ませながら山を登り、おかげで少しは体力がついたかもしれないが、夜になるとしんと静まり返るのが怖かった。それでも、秋、前方の山々が日一日と姿を変えていくのを楽しみにもしていた。

黄色と赤と。同じに見える日はなかった。色は少しずつ鮮やかになっていき、ある日、とんでもなく燃えた色に染まる。ほんのりと灯った街灯に浮かび上がる様は、息を飲むようだった。私は、家の前でただ呆然と眺めたものだ。でも、その風景はまた少しずつ色あせていって葉が落ち、すぐに雪に覆われてしまう。毎日その移ろいを眺めながら、最も美しいときはほんの少しの間しかないことを思い知った。

そう、紅葉はタイミングだ。山なら高低差でどこかは見ごろかもしれないが、平地ではそうもいかない。最も美しいときを見たいのなら、タイミングを計らないといけない。そう思っていた10年前の私は、素晴らしいと言われ、それでも見たことがなかった京都の紅葉を、旅館の予約をすることもなく日帰りで見に行こうと決めた。ニュースを毎日眺め、「見ごろを迎えました」の言葉を待つ。そして、いよいよその日、私は傍らで寝ていた夫に「今日にする」と告げると家を出、新幹線に飛び乗った。

数時間でたどり着いた京都の秋は、もう充分深かった。そして、私は京都の紅葉が何故美しいといわれるのか良く分かった。赤の色が違う。東京で見る茶色がかってくすんだレンガ色とでは、同じもみじだというのが信じられないくらいだった。

私は夢中で嵐山を歩き回り、写真を撮りまくって、夜にはライトアップされた清水寺まで堪能し、東京行き最終の新幹線に乗っていた。歩き回ったせいでふくらはぎが痛かったけれど、あんな充実した一日はなかったかもしれない。それ以来、残念ながら秋の京都は訪れる機会がない。

10月頃からだろうか。書店には沢山の旅行ガイドが並ぶ。どれも、紅葉が美しい京都の写真が表紙になって旅情をそそる。そんなガイドに書いてある極上の旅館で最高のもてなしを受けつつ愛でるのも心魅かれるけれど、それはもうちょっと年齢を重ねてからでもいい。その最高の旬を身軽に動いて楽しむのもやっぱり贅沢なんじゃないかなあと、ちっとも身軽でなくなってしまった私は思うのだった。

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コメント

こんばんは、

今年はいつまでも暖かかったせいか、京都の紅葉も今一つの感があるようです。ブッシュ大統領も楽しみにしておられるようですが。

やはり、キリッとした寒さを経験しないと 鮮やかな色にはならないのでしょう。
明日あたりから寒くなりそうです。

投稿: | 2005/11/14 22:43

kakoさん、こんばんは。
京都の紅葉のお話を読み、なつかしさに思わずコメントしてしまいました。
日帰りで嵐山、清水と回られたとは存分に紅葉を堪能なさったことでしょうね。紅葉には人を引きつけてやまない魅力がありますよね。

私は学生の時、京都でバスガイドのバイトをしていたので、紅葉の美しい頃に大原三千院をご案内するのはこちらもワクワクしました。プロらしきカメラマンが、川にせり出した真っ赤な紅葉の写真を撮っているのを見たこともあります。kakoさんはどんなお写真を撮られたのでしょうか。
友達と行ったところでは、南禅寺の近くの「永観堂」の紅葉は息をのむ美しさでした。
何だか京都に行きたくなってきました。

投稿: あずさ | 2005/11/15 00:19

涼さん、こんばんは。
京都の紅葉が鮮やかなのは、気温が一気に下がるおかげだと聞いたことがあります。
美しさと過ごしやすさと・・。共存しないかもしれないのが悩ましいですね。

今日から東京も寒くなっています(あ、週末はいらしたんですよね)。京都の紅葉もまた鮮やかさを増したのではないでしょうか。

投稿: Kako | 2005/11/15 23:21

あずささん、こんばんは。
京都でバスガイドですか・・・。説明することが沢山で、お勉強が大変だったのでしょうね。

この日は夫から一眼レフのカメラを借りて、確かフィルムを2本くらい使い切った覚えがあります。それでも、夫からはほとんどダメだしされました(涙)。被写体がいいだけではごまかせないですね。「構図の勉強をしなさい」と言われました・・・。

リベンジにまたカメラを提げて・・といきたいところですが、子供中心の生活をしていると難しいですね。いつかまたこんな日帰り旅をしたいものですが。

投稿: Kako | 2005/11/15 23:27

 秋の京都、それ自体が贅沢…。私のお気に入りは洛北方面。社員旅行の自由時間に一人で行ったのが初めて、二度目は妻と。この地域は交通の便が悪く、団体客も少ないのが特徴。
 お気に入りは蓮花寺の庭。座敷に座り半日ぐらいぼーっと見ていられたら……(今の私には、本当の贅沢かも)。
 時間に終われる悲しい日常、実現できるのはいつのことやら。
 小さな庭ですが、無限の広がりを感じさせるような、とても素敵な庭です。京都で一番のお気に入り。(ネット検索から写真は探せます)

投稿: HAYAMA | 2005/11/16 19:34

時間を忘れてただじっと景色を眺める・・それが本当の贅沢というものでしょうね。実現が難しいからこそでしょう。

面白いなと思うのは、皆さんそれぞれに「京都のお気に入りの寺」があることですね。それだけ個性を持ったお寺が点在しているということなのでしょう。ゆったりとまわりながら、自分の「お気に入り」を見つけるたびも、やはりしてみたいものです。

投稿: Kako | 2005/11/16 22:47

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