若い頃
このところ色々なことがあったせいなのか、会いたい人に「いつか会える」と思うのはもうやめて、「会いたい時は会おう」と思うようになってきていた。そう心に決めて旧知の人におそるおそる連絡をとってみると、これが案外喜んでくれたりして、うれしい。そうやって、先日その人とはほぼ十年ぶりに会うことができたのだった。
彼女は、私が仕事をしていた頃の職場の先輩だ。新人で右も左も分からない私にいつも優しく声をかけてくださっていて、私はずいぶん甘えさせてもらっていたように思う。そして、若気のいたりというのか、多分、ご迷惑もおかけしていたに違いない。
あの頃の私は恥ずかしい失敗ばかりしていた。慌てて行動するので職場のゴミ箱をしょっちゅう盛大に蹴飛ばしていたし、大切な書類をどこかに置き忘れてきたりしていた。今思えば周りを気遣う余裕もなくて、余計なことまで口にしてしまっていたと思う。そんな一つ一つをふと思い出しては、今でも「あれは取り消したい!」と一人顔を赤らめてしまったりするのだ。
果たして、ランチのお皿をつつきながら、話はその頃の思い出話になった。先輩からは私本人も忘れていた失敗談が出てきて、「はー、やっぱり、私は恥ずかしい人間だー」と思わずにはいられなかったが、先輩はそれでも「あれは面白かったー」ところころ笑った。その笑顔を見ていたら、私は、ちょっといつもとは違う心持になっていることに気付いた。
あの頃私は、「仕方がないなあ」とあきれられていたのだと思う。でも、そんな風に周りの方々から温かく見守ってももらっていたのだ
それから、先輩はこうも言った。「あの頃、あの部署は信じられないくらい忙しかったから新人を育てる余裕がなくて、すぐに即戦力として働いてもらってたんだよね。だから、見ていてかわいそうで仕方なかった」と。私自身に、そんな気はまったくなかった。むしろ、学生時代に真面目に勉強していれば、もっと仕事ができただろうにと恐縮していた。
「若い」というのはそれだけ拙くて、未完成で、恥ずかしいことだらけだ。この間まで、私はそれを否定的にみることが多かったと思う。でも、先輩と話をしていて、いい加減、あの頃の自分を認めてあげてもいいんじゃないかという気になった。「頑張ってたじゃん、私」未熟な分一生懸命突っ走っていた若い自分を、恥じるよりもほめてあげたくなった。
それがすなわち「年を取った」ということなのだろうか。でも、それなら年を取ることもそう悪くはない。そんな風に思わせていただいた、貴重な再会だった。
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