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追悼

出会いは中学生の時、母の書棚にあった「聖少女」だった。私はもう全ての本を読むことを許されていたが、それでもこの本を手に取るのは少し勇気が要った。背表紙のその文字は本来清らかな意味のはずなのに、妖しげで淫靡な感じが当時の私にも伝わったからだった。その作者・倉橋由美子さんが先日お亡くなりになった。69歳だった。

恐らく、皆さんは氏の「大人のための残酷童話」をご存知のことと思う。誰もが知っている白雪姫や一寸法師などを大人向けにアレンジしたこの童話集は、かなり沢山の方に読まれた。何しろ大人向けだ。強烈な毒もあれば濃いエロティズムも漂う。

その雰囲気がさらに凝縮されていると思ったのは「怪奇掌編」だ。じっとりと恐ろしさが迫ってくる良作揃いだが、そのどれにも人間の本来持つ残虐性とか邪心が透けて見える。お話の奇抜さよりも、そのことにより恐怖を感じるのである。そして、艶めかしく、それでいて乾いている。あの雰囲気は彼女独特の世界だ。私はその筆致に惹かれては読み返し、その度お酒に酔ったような気分にさせられてきた。

氏の新作「星の王子様」訳本が近く発刊されるのを、この訃報で知ったのは皮肉だった。彼女は一体、あのお話をどんな風に料理してくれているのだろう。今度は私をどんな世界に連れて行ってくれるだろう。氏の作品群を思い起こしながら、慈しみつつじっくりと読ませて頂こうと思う。

それにしても、69歳。まだ早過ぎる。
倉橋由美子さんのご冥福をお祈りします。

追記
リンクをしようとして、改めて倉橋由美子さんの著作は手に入れづらいことを実感する。本屋には言葉をただ羅列しただけのような本があふれているというのに。

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