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プロの仕事

実をいうと今夜と明晩は娘がいない。学校の行事で出かけたのだ。おかげでこのところ準備で大騒ぎだった。が、とにかく送り出してしまえばほっと一息。今日関東地方が肌寒いのが気にかかって「もっと暖かい洋服をもたせてやればよかった」と思ったけれど、とりあえず子供の帰宅する時間を気にしなくてよいというので「いつもなら出来ないこと」をしてみることにした。うーん、と腕組みして考えて、思いついたのは「お芝居をみること」。で、大竹しのぶ主演の「メディア」を見に出かけた。

「メディア」というのは蜷川幸雄氏演出のギリシア悲劇。この方の演出の舞台は一度見てみたいと思っていたし、別の女のところへ行ってしまった夫への復讐劇を、きっと鬼気迫る演技で魅せてくれるだろう大竹しのぶさんを見たかった。実際、彼女の狂気ぶりはすごかった。ものすごく長い台詞をそのまま高いテンションで搾り出すように吐いていく。共演の男性陣の声の響きもよく、2時間はあっという間だった。

この舞台を見ながら、私は高校生のときにみた演劇を思い出していた。木下順二作「夕鶴」。女優・山本安英さんが1000回以上も上演したことで有名な舞台を、まさに山本安英さん主演で見るという幸運に恵まれたのだった。そのときは既にかなりの高齢でいらしてさすがに若々しい声とはいえなかったけれど、練り上げられた演技はやはりすごかった。でも、私が感動したのはそのことだけではなかった。舞台上に降る雪だ。

ちら・・ちら・・舞い落ち始める雪。その数が少しずつ増えていく様。それは「本物の雪みたい」ということ以上に、出演者たちの心のうちまで表現しているかのようだった。そのとき、舞台というのは演者、演出家、脚本家ばかりでなく、照明や大道具や小道具に至るまでたくさんの人々の上に成り立っているのだなと、改めて思った。そして、やはりプロの仕事というのは半端なものじゃないのだな、とも。

今回の「メディア」の舞台演出もきれいで凝っていた。個人的には終盤の演出にあまり納得がいかなかったけれど。それに、主役のメディアの憎しみと怒りを表現するなら、夫を心底愛していた頃の姿を見せた方が対比が際立つし、大竹しのぶさんの演技力を堪能できたかもと思った。まあ、ン年ぶりに演劇を見た人間があれこれ言うのもおかしいだろうが。

別世界へ行って、帰ってきて、劇場の外へ出たらやはり風が冷たかった。「ああ、やっぱり、上に羽織る厚手のものをもう一枚、娘の荷物に入れてあげればよかったな」と後悔しつつ、家路に向かった私だった。

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コメント

おはようございます。大竹しのぶのお芝居ですか。いいなあ。しかも、思い付いていけるなんて……。通常は何か月も前に予約しておかないと見られないと思ってました。
ずっと前、大竹しのぶの「ルル」(デヴィット・ルヴォー演出/フランク・ヴェキデント作)を観たことがあります。小さい小屋だったこともあり、すぐそこで演じる大竹しのぶのルルは、鬼気迫るものがありました。ほかの芝居も観ましたが、どれを観てもあの人、いい意味で化け物です。

投稿 さり | 2005/05/14 10:10

さりさん、こんばんは。
多分・・予約無しでは普通無理なのではと思います。昼間行うマチネだったということもあるのかもしれませんが、開演15分前に辿りついて見られたのですから運がよかったのでしょうね。普通の席の後ろに作られた補助席でしたけど。パイプ椅子の上にクッションをのせたものでした。

私は大竹しのぶさんのお芝居を観るのは初めてでしたが、やっぱりあの役作りはすごいですね。集中力が半端じゃありません。なんだかその気迫に圧倒されました。
ただ・・
稽古、本番・・と長い間あの役に浸った状態で、現実世界の彼女の周囲の人々は、ちょっと大変かもしれないなあと、凡人の私は思ってしまいました。

投稿 Kako | 2005/05/14 22:52

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